志望学部の流行の変遷

文部科学省の学校基本調査によると、95年は57万4000人いた工学部志願者は、05年に33万2000人にまで減少。逆に医・歯・薬学部は同23万9000人から28万5000人に、看護・医療・保健学部も5万人から11万人に倍増している。医療系学部は理学療法士などの資格が取れるため、就職を見越した受験生が殺到する状況だ。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061025-00000022-maip-soci

噂話程度では良く聞いていましたが,実際に統計データを見たのは今回が初めてです.

とりわけ電気系学部の志願者の減少は深刻です。それは各大学で如実に表れています。東京大学では専門課程への進学振り分け時の学科別の基準点でかつては上位だった電子・情報関連が下から二つを占める状況になっています。

http://techon.nikkeibp.co.jp/article/TOPCOL/20060719/119239/

さらに言うと,恐らく最も志願者数の減少が大きいのは情報系だろうと思います.それは何故か?端的に言うと,“ブームが過ぎたから”だろうと思います.

高校生が皆が皆,本当に真剣に自分の将来像を思い浮かべて学部を選択している訳ではありません.ほとんど夢(妄想)に近い将来像だけで学部を選択する人も多いですし,さらには“何となく”で学部を決めてしまう人もいます(それが良いか悪いかは,また別の話).そのため,学部の志願者数もその時代の“流行”に影響された,言うならば,“浮動票”に大きく左右されます.

今から10年前と言うと,ちょうどインターネットが社会に浸透し始めた頃でした(もう少し後?).なので,そういったものに憧れて電気系(または情報系)学部に志願した人も多いのではないか,と思います.逆に,現在は株取引などに興味を持つ人(学生)が非常に増えてきています.工学部志願者の減少数と医歯薬学系(看護なども含む)への志願者の増加数の差は10万人程度ありますが,おそらくこの10万(学生自体が減少しているため,10万もないだろうが)という“浮動票”が,現在は経済学部などに流れているのでは,と思います.

さて,電気系志願者の偏差値は確かに低下しています.しかし,これが本当に由々しき事態かどうかはまだ何とも言えないところです.流行している間は,志望者数も増えるため偏差値的に優秀な人も多く集まってきます.しかしながら,そうやって集まってきた人の中には,自分の理想(妄想)と現実のギャップに絶望する人も少なからず存在します.私の周りでも“プログラミングなんてありえない”と別の道に進んだ人もいます.優秀だけど好きじゃない人と好きだけど優秀じゃない人,どちらが“良い”人材なのかはもう少し時が経ってみないと分かりません.

電気系志願者数が減少している.だが,心配のしすぎではないだろうか.なあに,かえって免疫力がつく

蛇足:どうでもいいのですが,

関西大(大阪府吹田市)は工学部の募集を停止し、「システム理工」「環境都市工」「化学生命工」の3学部に再編する。

・・・(中略)・・・

早稲田大も96年続いた理工学部を「基幹理工」「創造理工」「先進理工」の3学部に再編。大学院も併設し一貫教育を強調する。

・・・(中略)・・・

東京電機大は、これまで工学部に入っていた建築や情報の学科を集めて「未来科学部」を新設。

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061025-00000022-maip-soci

何をする学部なのか余計に分かりにくくなっているような気がするのですが.3つに分けて受験生に“さぁ,選ぶが良い”というのは一見良さそうに見えますが,“外れを引いてしまった!”とかになりそうで怖いです.