クラウドと言う言い訳

日本の大企業がなぜ GMail など SaaS の利用を嫌がるか。原因はいろいろあるが、中でも特筆すべきは「何かあったときに叩かれる」というリスクが極めて大きい、という点である。

…(中略)…

GMail でなく閉鎖型の社内システムを使っても、事故が起きる確率は大して変わらないし、顧客に迷惑をかける度合いも大して変わらない。しかし、事故が起きたときに「これだけセキュリティに気を遣っていて事故ったんだから仕方ないですよね」と言い訳ができれば、大企業自体が受けるダメージは大幅に低減できる。日本の大企業においてセキュリティという言葉は、だいたいそのような意味で使われている。

この「言い訳できるよう準備しておく」というのは、何か価値を生み出すわけでもなく、生産的と言いがたい作業なのだが、日本社会においては重要なプロセスである。情報セキュリティ以外でもそうしたプロセスはよく見られるし、それによって雇用が維持されている側面もある。オープンソースより「保証のある」プロプライエタリなソフトウェアが好まれるのも同じ原理だと私は見ている。

大企業が GMail を使う言い訳

昔、「似たようなフリーソフトや無料(または安値)の Web サービスが溢れているのに、何でわざわざ高い金を出してプロプライエタリなソフトウェアを購入したり作らせたりするんでしょう?」と言う話をした際に、「あれは商品だけじゃなくて『何かあった時に叩く(クレームをつける)権利』を買っているんだ」と言う話を聞いた覚えがあります。安全ではなく、安心を買っている、と言う感じでしょうか。

ふと、クラウドと言う言葉は「言い訳」として多くの企業に受け入れられ、消費されているのではないかと言う気がしました。

歴史で、黒船以降、日本の社会がガラッと変わったと学んだ。日本人は変化を嫌うのに、変わるときは一気に変わるとも聞く。そこには「意志決定の謎」が絡んでいる。

だって、黒船だもん、しょうがないんじゃない?

だって、あの○○社はやってますよ?

だって、となりの○○ちゃんの家でも買ってもらってるもん。

この認識が一定人数以上で共有されると、揚げ足取りは消え、完璧な言い訳ができあがる。そうなれば、すべてが一気に変わる。

意思決定の謎

個人的には、今でも 「ドットコム」「Web2.0」そして「クラウド」 で述べたように、既に個々の技術毎に名称が定着してるのだから、わざわざ詳細をぼかすような分かりにくい総称を新たに定義する必要はないと考えています。

しかし、そういった個々の名称ではインパクトが弱いため普及が進まないと言う問題があったのかもしれません。例えば、クラウドコンピューティング で挙げられている類似用語を全て「クラウド」と言う単語で記述するようにすれば、「クラウド」と言う単語の出現頻度は何倍にも膨れ上がります。この出現頻度の増加によって出来上がるインパクトが「言い訳」として多くの企業に利用・消費されているのかなと思いました。