はてブコメントの一覧性と「これはひどい」状態になる条件

はてブコメント論 2010 梅雨.

AK on Twitter: "@shisetu 飲めない事をただ強調するんじゃなくてキチンと理由まで説明すべきだと思うな。学生じゃなくて社会人だし、職場のコミュニケーションて大切なことだよ。
お金貰ってるから仕事だけしてればいいってもんじゃないよ。"
と言う呟きに対して,はてなブックマーク上で同じような論調のコメントが大量に書き込まれたため,その状況を好ましくないと感じた人達とで(主にメタブで?)はてブコメント論が再燃したようです.

一覧できる事によって増幅される不快感

b:id:sekiryo あのブクマ善意の一般市民のデモとやらに紛れて個人特定されない場所から腐った玉子投げる人みたいな卑劣な感じがしてヤだよなぁ。口汚い人間は文字だけ見ててそこに人間が居ると思ってないから無視してもいいと思う
b:id:maki_tetsu いつの間にかこの人が飲みを強要する人代表にすり替わってる。「こういう奴は説明したって分かりっこないんだよ」とか、いつの間にか見えない敵に向かって吠えはじめてるはてなーがひたすらキモかった。

http://b.hatena.ne.jp/entry/togetter.com/li/32911

個人的に興味深いと感じたのは,上記ようなのコメントを残したユーザ達は自分も「卑劣な感じがする」とか「キモい」と批判している人達と同類の存在になる(他のユーザにそう認識される)可能性が十分にあったと言う事をどの程度認識していたのだろう,と言う事でした.

はてなブックマークに対する問題提起の一つに「コメントが一覧できてしまう事によって,(場合によっては)不快感が増大してしまう」と言うものがあります*1.上記のコメントも,個々としては,そこまでひどいと感じるようなものではありません.しかし,同程度の口調で同じような批判が 100個も 200個も並ぶと,それらを閲覧した人の印象もずいぶんと変わってきます.

「観衆」としてのコメント

はてブコメントについては,歓声としてのはてなブックマーク と言う意見が存在します.はてなブックマークでコメントを書くユーザの心理はテレビ,ラジオ,スタジアム,...で何かを視聴している観衆が,何か(応援,批判,野次,愚痴,...)を呟くときの心理に近い,と言う意見です.私もこの意見に賛同しています.はてなブックマーク - Twitter / Akihiro Kano: @shisetu 飲めない事をただ強調するんじゃなく ... については「一々この程度のことで200もブクマで批判していたらキリがない」と言う意見もありましたが,上記で批判(のような)コメントを残している人達の多くは,批判していると言う認識は薄く,どちらかと言うとテレビでひどい映像を見たときに愚痴を言うような感覚に近いのではないかと感じています.

以前に同じような意見を述べた際に,下記のような反論をもらいました.

b:id:blackdragon はてブでコメントしている人の多くは、自分のidと紐付けられてそのコメントが評価されることを自覚していると思うが。

はてなブックマーク - 何故はてなブックマークには「アフォ」なコメントが多いのか? - Life like a clown

はてなブックマークでコメントを書いているユーザの多くは,「自分が書いたコメントが不特定多数に閲覧される」と言う事実はきちんと認識していると思います.したがって,多くのユーザは見られると困るようなもの(犯罪自慢,個人情報,...)は書き込まないし,先に引用したユーザにしても,自分のコメントが不特定多数に閲覧されても別に構わないと思っているだろうと予想されます.

しかし,私は,はてブでコメントしている人の多くは「コメントが評価されること」ははっきりとは自覚していないのではと感じています.コメントしている人の多くは,恐らくは「自分が書いたコメントが他にどのような影響を与えるか」という事はあまり意識していません.これは,何らかの観戦をしている観衆が「自分が野次を飛ばす事によって周りにどのような影響を与えるのか」と言う事については,あまり深く考えていない所と似ています.その意味でも,私はコメントを書く人と観衆(正確には「応援をしたり,野次を飛ばす」観衆)と言うのは非常に近い性質を持っているように思います.

ただし,私は,その状況を悪いとは感じていません.自分のコメントが他にどのような影響を与えるかを予想する事は非常に難しい事です.そういった難しい事を要求してしまうと,コメントを書く事への心理的抵抗感を上げてしまいコメントが激減する事が予想されます(関連:はてブコメント論 - Life like a clown).

Web(特にここ 5年くらい)では,「書き手には何でもいいからとにかく投稿してもらって量を稼ぎ,質に関しては Google などの検索エンジンはてなブックマークなどの SBM,ニュースサイトなどの機械的,人力的な編集機能で(ある程度)保障していく」と言う原則で動いてきました.その意味でも,個人的には,この辺りの問題に対しては「より有効なフィルタリング,カスタマイズ機能」に期待したいと思っています.

コメント欄が「これはひどい」状態になる条件

しばしば批判の対象となるはてなブックマークのコメント欄ですが,個人的には,今回のようにコメントが同じような論調のコメント一色で埋まる例は割と稀なケースであるように思います.そこで,最後にコメント欄が「これはひどい」状態になる条件について少し考えてみたところ,以下の 2点が満たされた場合かなと思いました.

  1. 論点が一つ(または非常に少数)である事(≒突っ込みどころが一つであること)
  2. 誰もが言及しやすい話題である事(参考:自転車置場の議論 - bkブログ

こう考えると,twitter の呟きと言うのは今回のような事例が起きやすいのかなと感じました(文字数を140字に制限されているので,あまり多くの事に言及できない).したがって,今回のような例は,twitter が普及するにつれて徐々に増えていくのかもしれません.

*1:この問題に関しては,はてな側もはてなブックマークのコメント一覧非表示機能について - はてなブックマーク日記 - 機能変更、お知らせなどと言う案を提供するほど根強いものとなっています.