自らの強みを知り、果たすべき貢献を考える

SoGap の更新を確認していると、http://blogos.com/article/57962/オリジナル。以下、元記事)と言う記事が目に入りました。記事自体はもやもやとした感想しか沸かなかったのですが、読んでいるうちに 明日を支配するもの―21世紀のマネジメント革命(以下、本書)と言う書籍の事を思い出したので、これについて何か書いてみます。尚、元記事は「企業としての在り方」と「個人の生き方」とが一緒くたにして述べられていましたが、ここでは「個人の生き方」のみに焦点を当てます。

本書では、6 章の「自らをマネジメントする」において、個人が社会(企業、組織、etc)とどう関わっていくべきかと言う問いについて検討されています。この業界(IT 業界)にいると殊更強く実感する事ですが、個人の労働寿命よりも企業の存続寿命の方が短い事も珍しくなくなった現代においては、自らのキャリア(仕事)を変えると言う可能性について、ある程度の現実味を持って考えておく必要があります。本書では、自らのキャリアの形成の仕方(自らをマネジメントする方法)を以下の 5 点に分けて論じられています。

  1. 自分は何か。強みはなにか。
  2. 自分は所をえているか。
  3. 果たすべき貢献は何か。
  4. 他との関係に責任は何か。
  5. 第二の人生は何か。

これらのうち、この記事では、元記事と関係のありそうな 1. と 3. について触れます。

自らの強みを生かす?好きな事を続ける?

元記事では、記事の途中で、自分の強みを活かすのではなく「やってて楽しいこと」に時間を費やすべきだと言う主張がなされています。

人間は「やればできること」ではなく、「やってて楽しいこと」に人生の時間を使うべきなんです。

自分の強みを活かすというアホらしい発想 - Chikirinの日記

これに対して、本書では、「好きなことをする」と言う選択を行った人たちのうち、社会に対して何らかの貢献、あるいは自己実現等の成功に繋げた者はほとんどいなかったと論じています。

こうして早くも 60 年代には、知識労働者自身が何をしたいかを自ら考えなければならないとされるようになった。好きなことをすることが貢献であると考えられた。68 年の学生運動の高まりの背景にも、そのような考えがあった。

やがて、この考えもまた、組織人の概念と同じ間違いであることが明らかになった。好きなことをすることが、貢献、自己実現、成功につながると考えた者のうち、実際にそれらのものにつなげた者はほとんどいなかった。

しかしもはや、かつての答え、すなわち言われたことや割り当てられたことをすることに戻るわけにはいかない。とくに知識労働者たるものは、自らの貢献は何でなければならないかを自ら考えることができなければならない。

明日を支配するもの―21世紀のマネジメント革命(p. 215)

好きこそ物の上手なれ と言うことわざがある一方で、下手の横好き と言う言葉もあります。各種メディアで騒がれている一流のアスリートのような人達であれば、自分の好きな事をひたすら続けていく事によって成功を勝ち取る事もできるかもしれません。しかし、残念ながら多くの一般人にとっては、単純に「好き」なものを選択しても後者(下手の横好き)になってしまう可能性が高く、あまり明るい未来は期待できないと言う事なのかもしれません。

自らの強みを知る事は難しい

本書では、「好きなことをする事が成功に繋げられる可能性は低く、自らをマネジメントするためには、自らの強みが何かを知り、(その強みを生かした)貢献できる事を考える必要がある」と言う論調で語られています。一方で、元記事で主張されているように「自分の強みを活かす」と言う考えも同様に成功に繋がりにくいと言う現実もあります。

この原因の一つに、「自分が強みと思っているものが間違いである」と言う事が挙げられるかもしれません。

誰でも自分の強みはわかっていると思う。たいていが間違いである。知っているのは、強みというよりも強みならざるものである。それでさえ間違いのことが多い。

明日を支配するもの―21世紀のマネジメント革命(p. 194)

本書では、自らの強みを知る方法はフィードバック分析を行うしか方法がないと主張されています。フィードバック分析については、ドラッカーに学ぶライフハック「フィードバック分析」 - TRANS にて解説されているの詳細はそちらを参照してもらうとして、個人が日常的に行う方法としては、例えば「毎年、正月に新年の抱負を書き、年末にそれについての反省を書く」と言う感じでしょうか。新年の抱負を書くと言う行為自体は、めんどくさい慣習の中では比較的やられている方かなと言う気もしますが、年末にきちんとを反省すると言う段階までいくと、毎年実行するためにはそれなりの意志の強さを必要としそうです。ちなみに、私は、今年の新年の抱負すら書くのを忘れていました。

そう言った訳で、「自らの強みを活かす」の前段階である「自らの強みを知る」と言う行為ですら、なかなか一筋縄ではいかない事が分かります。

果たすべき貢献を考える

さて。幸運にも「自らの強み」をきちんと把握できたのであれば、次はその「自らの強み」を活かしてどう社会に貢献していくかを考える必要があります。

自らの貢献が何かを考えるうえで、答えなければならない問題が、もう一つある。どこで、いかに貢献するかである。

だが、あまり先を見てはならない。貢献のためのプランを明確かつ具体的なものにするためには、長くともせいぜい一年半を対象期間とする事が妥当である。問題は、一年半あるいは二年のうちに、いかなる成果を上げるかである。

答えには、いくつかの条件がある。目標は難しいものにしなければならない。はやりの言葉でいえば、背伸びをさせるものでなければならない。だが可能でなければならない。不可能なことを目指したり、不可能なことを前提とすることは、野心的と呼ぶに値しない。単なる無謀である。

さらには、意味のあるもの、世の中を変えるものでなければならない。目に見えるものであって、できるだけ数字で表せるものであってほしい。

明日を支配するもの―21世紀のマネジメント革命(p. 216-217)

背伸びは必要だが不可能な課題に挑むのは単なる無謀である、と言う主張はもっともです。自分の業界だと「プログラミング初心者が、テキストエディタを作ると言う課題を設定して爆死する」みたいなものでしょうか。一方で、この例で分かるもう一つの点として「自分にとって背伸びな事なのか不可能な事なのかの判断能力が(初期の頃ほど)ない」と言う現実があります。この点については、本書においても(別の節で)触れられていました。

強み、仕事の仕方、価値観という三つの問題に答えが出さえすれば、うるべき所もあきらかになるはずである。

ただしこれは、働き始めたばかりの若いうちに知りうることではない。

明日を支配するもの―21世紀のマネジメント革命(p. 212)

じゃあどうするんだと言う話については残念ながら明確な記述がなかったのですが、個人的な印象としては、自らのキャリアの最初の頃に関しては企業や組織に委ねるしかないのかなと言う気がします。それなりに大きな企業になってくると何らかの形で研修的な要素も導入していますし、大学の専門講義などもまじめに受講していればその分野での知識を体系的に教えてくれます。そろそろ就職活動も本格化してくる頃かと思いますが、もし就活状況に余裕のある人であるならば、自分のキャリアプランの最初として*1どの企業を選ぶかを検討してみるのも良いかもしれません。

こう言うテーマについて読んだり考えたりしていると、「人生とは何てクソゲーなんだ」と言う気にもなってくるのですが、まぁ自分にとってプラスな部分だけでも少しずつ取り込んでいって「もしも」に備える、くらいの心づもりで深く考えすぎないようにする事が大切かなとも思います。

*1:いずれは別の会社に移っていく可能性がある、と言う事を何となくではなく明確に意識する

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