公開情報の制御方法

L. Sweeney, ``k-anonymity: A model for protecting privacy,'' International Journal on Uncertainty, Fuzziness and Knowledge-based Systems, 10(5):557--570, 2002.

上記の論文の話を聞いていて少し思ったことをつらつらと.論文の内容はあまり理解していないと思われるので,著者が言いたい事とはずれているかもしれませんが.

最近,SNSとよばれるサービス(というかmixi)が流行ってます.気心の知れてる人同士でコネクションを持つことで,コミュニティを広げていこうというのが(多分)大元の目的で,見てる限りそれなりの成功を収めています.ただ,インターネットでは大抵そうですが,こういった会員制のサービスを利用する際に問題になる事として,個人情報をどうしよう(もっと言うと,本名を公開するかどうか)ということが挙げられます.この時,本名を公開したくない最も大きな理由は,恐らくは,こちらから意図的にばらした人意外には自分のことを特定されたくないからという心理が働くからではないかと思います.

この問題に関しては,現在多くの人は名前の欄に嘘(は言葉が悪いですが,ハンドルネームとか)を記入することで回避しています.しかしながら,このような方法を用いて対処を行うことによってSNS本来の目的が損なわれる可能性が出てきます.一部の人は(もしかすると結構多いのかも)既にある程度実感しているようですが,本名を名乗らずにハンドル名等を使用することによって匿名化が起こり,その結果荒らしや中傷等を助長させることになっていきます(俗に言う2ch化).もっとも,ハンドル名なども個人を特定し得る情報の一つですので,それらの情報が荒らしなどの行動を抑止する働きを担い,完全に2ch化することにはならないでしょう(ref: すちゃらかな日常 松岡美樹:匿名の心理、実名の心理〜暴言の抑止力になるものは?).ですので,そこまで気にする必要のない事なのかもしれませんが,今後コミュニティが大きくなっていくにつれてそのサービスが破綻する可能性は秘めているのではないかなと思います.

したがって,SNSとしての役割を果たす(2chとの差別化を行う)ためには,将来的には,その匿名性をなくす(実名公開制にするということか?)必要があるのではないかと思います.ただ一方で,やはり上に述べたような(あまり関係ない人には特定されたくない)心理は働きますから,そういった問題を考慮しないとコミュニティが広がりません(誰も使わない)ので,その辺りのトレードオフが問題です.

以上のような問題を解決するために,最初に挙げた論文のような研究が役に立ってくるのかなぁと思います.上の論文は,公開する情報の粒度を粗くすると特定されなく(されにくく?)なるという考え(例えば,名前と正式な住所を公開すると即バレだが,名前と都道府県に留めると,都道府県内で同姓の方は何人かいるので,特定されなくなる)のもとでいろいろ説明しています.これが本当にうまくいけば,本名を晒しても関係ない人には特定されなくなりますので,2chとの差別化を図ることができ,もっと発展していくのではないかなぁと.実現するのは相当難しそうですが.