ハラスメント Lv XXX

ちょっと前にハラスメントに関する話題(この時は,セクハラとアカハラ)とガイドラインなるものを見せて頂きました.今回は,その時に感じたことと現時点までの自分なりの結論に関して.

ハラスメントに関するガイドラインを見た時に良く抱く感想として,「そんなのまでハラスメントになるのかよ」,「というか,そんな事言ってたら何もできないんですけど」などがあります.多くの場合は,笑い話に近い雰囲気になって流れるのですが,それもハラスメントがなくならない一因なのかな(ハラスメントに対する認識がどこか薄くなる)とも思います.

ハラスメントを語る(主に,ガイドラインの策定をするときなど)際の問題の一つとして,語る側も“全ての問題を同じレベルで見ている”という事が挙げられます.例えば,“×××しなかったら,退職させる”ような脅しと,“人によっては不快に感じるような言葉”を使うことを同じレベルで(同じ項目に列挙するなど)語ると問題の重大さがぼやけてしまう原因ともなります.

そこで,今回はハラスメントの区分けに関して考えます.まず,ハラスメントの意味から考えてみようと思います.ハラスメントは,“嫌がらせ”と訳されます.国語辞典を引くと嫌がらせとは,相手の嫌がることをわざとしたり言ったりして困らせることと定義されています.つまり,嫌がらせという言葉には,相手が不快に思うことを“意図的に(悪意をもって)”行うというニュアンスが含まれます.今回はその部分に着目して,ハラスメントを次の2つのレベルに区分します.

  1. 意図的な(悪意のこもった)相手の仕事などに支障が出るような言動
    • 地位を利用した脅迫
    • いじめや相手に精神的苦痛の及ぶような(虚偽の)噂の流布
  2. 本人に悪意はないが,人によっては不快と感じてしまうような言動
    • (古い)社会的慣習に基づいた言動
    • それ以外の,人によっては不快に感じるような言動

セクハラを例にしてみると(セクハラに関しては,これと同じような区分が“対価型”,“環境型”として既に行われているようです),前者は“地位が上な事を利用して,無理やり関係を迫る(断ったら辞めさせるとか)”などが挙げられます.それに対して,“女性の新入社員にお茶運びをやらせる”などは後者(これまでの社会的慣習に基づく)に当たります.また,後者には以下のような事例も含まれます.

ただ、セクハラ問題に絡む裁判は難しい面もあります。同じことを言われても、「上司」と「キムタク」では女性側の不快さの程度が異なるといった受け取り方の問題や、・・・(後略)


セクハラ問題:弁護士前田尚一法律事務所(札幌)

前者に関しては,場合によっては訴訟にまで発展するような問題ですが,後者はどちらかと言うとマナー問題にも似たような性質を持っています.そのため,これらの事例を同一の問題として語ってしまうと,前者の問題まで後者のレベルの意識で見てしまい,問題の重大さが薄れる原因ともなります.

ハラスメントを受けた(と感じた)側は,程度によらずそのことをきちんと伝えれば良いと思います.しかし,実際に議論を行う(ガイドライン策定など)際には,問題の重大さに応じた線引きをきちんと行うことが重要になってくるのでは,と思います.

参考