未婚者批判記事の存在意義

最近、よく目にする言葉がある。「結婚できない男」。ちょっと頼りなげな男性が浮かぶ。かつてなら「肩身の狭い存在」だったはずだが、なぜ今−−。

・・・(中略)・・・

「40代から急に物足りなさを感じる未婚男は多い。夢も趣味も大したものではないと気づくんですよ。でもそのとき、男としての活力、市場価値は明らかに落ちている」と大久保さんは言う。

・・・(中略)・・・

結婚して良かったという話はあまり聞かないですね。みな元気がなくなり、老けちゃって。僕のまわりの業界の人間は、「独身の方が楽でいいよ」と、僕をうらやましがる。だから、男同士で話すといつも「やっぱり一人がいいや」という結論になるんです。

http://www.mainichi-msn.co.jp/entertainment/geinou/archive/news/2006/09/12/20060912dde012040042000c.html

夢も趣味も確かに大したものではありません.飽きてしまったらそこで終わりですし,かなわないから“夢”なのかもしれません.ただ,一方で結婚もやはり大したものではありません.

もちろん、結婚によって得られるものも多い。しかし、それは結婚以外でも得られるのである。「精神的な安らぎを得られる」ことを結婚の理由にあげる人が多いが、私にしてみれば結婚よりも猫でも飼った方が遙かに心が安らぐ。溺愛し、徹底的に可愛がる。死んでしまったらどうしよう、と飼ってもいないうちから心配してしまう。

http://simple-u.jp/pd200309.html#2003-09-19

結婚によって得られるものの多くは,結婚以外でも得ることができます.一方で,結婚してしまうと,男女どちらも日常生活で様々な制約(失うもの)を受けます.そのため,結婚が持つ魅力というものはそこまで高い訳ではありません.未婚者に対する社会的な風当たりが弱まった現在では,未婚者が増加していくもそれなりに自然な流れであると言えます.

さて,上記のインタビューで阿部寛さんも語っているように,結婚に対して魅力を感じていない人も数多く存在します.それにも関わらず,マスコミは多くの場合,“結婚すること”に肩入れをし未婚者を批判します.これは,なぜでしょうか.

この理由の一つとして,“マスコミにはそれが求められているから”ということが挙げられるのでは,と思います.

たとえば、未婚のカップルの間に子どもができたとしよう。頭にうかぶ選択肢は、次の二つである。

「子どもは産むけど結婚しない」という選択肢もありえるのだが、今の日本で男がそんなことを言ったら、非難の嵐だろう。

・・・(中略)・・・

子どもが欲しくないならば必ずしも結婚は必要ではない。他の条件によるだろう。だが子どもが欲しいなら、結婚はほぼ確実に必要である。

http://simple-u.jp/pd200309.html#2003-09-21

少なくとも日本では,結婚せずに子どもを産むという選択肢は社会的に受け入れられていません.そのため,未婚者が増加すると出生率が低下します.(すでに現在,直面している問題ですが)その状況は,社会にとって非常に問題なので,解決しなければなりません.解決するために考えられる選択肢は2つあります.

  • 人々が結婚するように仕向ける
  • 未婚者が子どもを産むのは普通という意識を植え付ける

しかしながら,後者は現状では非常に困難である思われます.そのため,取る選択肢は前者,ということになります.

先にも述べたように,未婚者がなぜ増加したのかと言うと,未婚者に対する社会の風当たりが弱くなったからです.そのため,未婚者の増加を食い止めるためには圧力(プレッシャー)が必要となります.現在の社会では,マスコミがそのプレッシャー役を担っているのでは,と思います.

もちろん,あまりプレッシャー役に暴走してもらっても困りますので上記のような記事に対する批判は多いに展開していけば良いと思います.しかし,マスコミまで未婚者の肩を持ち始めると,歯止めをかける者が存在しなくなってしまいます.そういった意味で,上記のような記事が社会には必要とされているのも確かです.