目的としての消費活動、手段としての消費活動

シンプル族の反乱|ただのオタクと思うなよ を読んでいて,ふと,消費活動を考える際には「それ自体が目的となっている消費活動」と「何らかの目的を達成するための手段としての消費活動」に大別して考える必要があるのかなと思ったので,今回はこの観点で消費活動を考えてみます.

目的としての消費活動

消費活動の中には、「買うこと(消費すること)」自体が目的になっているものが多々存在するように感じます。例えば、何らかのコレクター(コイン、模型、フィギュア、トレーディングカード等)などはこれに当てはまるように思います。また、特定の有名人のファンなども、その有名人に関するものは全て買うなどのように、買うこと自体が目的になっているケースも多々あります。

実際買い物をけちっている若者が多い一方で、物欲の固まりともいえるオタク層は増えている傾向にあるわけで、彼ら(彼女ら)が例えばすでにテレビで見たアニメをブルーレイで改めて買ったり、買ったら鑑賞するだけのはずの美少女フィギュアを好んで買い求めることは、この「シンプル族」的生き方と真っ向から対立するはずです。

シンプル族の反乱|ただのオタクと思うなよ

こうした「消費すること自体が目的」となっている層に関しては、今も昔も消費量(購入量)はさほど変わらないのではないかなと思います。ただし、趣味が多様化しているなどの理由で、古くから存在するような業界に関しては消費が落ち込んでいると言う事はあり得そうです。

手段としての消費活動

消費活動のもう一つの側面として、何らかの目的を達成するための手段としての消費活動があります。個人的には、手段としての消費活動は以下の 3 種類くらいになるのかなと思います。

  • 利便性の向上のため
  • 暇を潰すため
  • 異性にアピールするため
利便性を向上させるための消費活動

まず、利便性の向上に関しては、最も分かりやすいのが自動車だろうと思います。自動車に関しては、「環境対策とランニングコストでの値頃感を謳った特定の車種に限って狂ったように売れている」そうです。これは、自動車を購入している人達の多くが「利便性を向上させるための手段」と考えているためだろうと思います。

自動車を「利便性を向上させるための手段」として購入する人達にとっては、自動車は「動けば何でも良い」と言えます(これは「若者」に限らず、例えばうちの母親なども同じ事を言っている)。一方で,「いつかはクラウン」のような人達にとっては「クラウンを買う事自体」に意味があります(他の車種ではダメ)。結局、自動車の消費の落ち込みは「車を買う事自体が目的」となっている層(趣味:車,みたいな人達)が減ったからではないかなと感じます。

暇を潰すための消費活動

次に、暇を潰すための消費に関してですが、これはやはりインターネットや携帯電話でのやり取りの定額化が大きいように思います。これまでは、暇を潰すためにはその都度ある程度の額を消費しなければなりませんでした(無料のもので済ますと言う手もあるにはありましたが)。しかし、インターネットや携帯電話でのメールのやり取りなどのサービスが定額化するにつれて、「適当に Web ページを見ていれば良い」「誰かとメール/チャットをしていれば良い」などのように非常に低コストで暇を潰すことが可能となりました。

両方に共通する事ですが、「消費すること」を手段として考えてる人にとっては「目的を達成するためのもの(車、遊び、……)は何でも良い」と言えます。これが、「消費する事自体が目的」となっている人達との間で意見がかみ合わない理由だろうと思います(「そんな安っぽいもので恥ずかしくないの?」「貧乏くさい趣味?」「それで楽しいの?」など).

異性にアピールする手段としての消費活動

バブル期においては、「消費すること」が異性へアピールするための効果的な手段だったそうです。最近、そう言ったバブル時代の経験談のお話を聞く機会40歳前後の人達とお酒を飲む機会が増えたのですが,彼らが 20 代の頃は「○○○を買った」とか「○○○で何かをした(ゴルフ、食事、etc)」と言う事実が異性へアピールするのに非常に有効だったと言う話をよくされています。

しかし、現在においては「消費すること」が必ずしも異性へのアピール方法にはならないようです。先日、友人(20代前半の女性)と飲んだときにその友人が面白い話をしていました。

この前合コンに参加したときに、イケメンな男の子が「俺は車に500万くらい使っててさーははは」みたいな話を豪語してて、イケメンだし誰か食いつくかなーと思って眺めてたんだけど誰も食いつかなかったの。

それで、合コンの後に反省会みたいなのをやったんだけど、その時にそのイケメンに対して全員で一致した意見は「あの生活力のなさはナイワー」だった。

サンプル数が少ないので上記のような意見が大勢がどうかは分かりませんが、現在においては(無謀な?)消費活動は異性にアピールする方法としては、むしろマイナスに働く事もあるようです。こうなってくると、異性にアピールするための手段として消費活動を行っていた人達にとっては、もはや消費する理由がなくなります。

手段としての消費活動に関しては、様々な要因でどんどんと低コストで「目的」が達成できる世の中になってきています。そのため、消費活動を促すためには、先に挙げられていたオタク層やかつての「いつかはクラウン」層のように、いかに「消費する事自体が目的」になるように持っていくかにかかっているのかな、と感じました。