「実名信者」にその素晴らしさを熱く語られたときの平和で適当なかわし方

実名ほど,ハマっている人と興味のない人との温度差が激しいものはないと言えるでしょう.

「実名論者」と言うスラングでも有名ですが,ハマっている人の中には「実名の素晴らしさをもっと広く伝えなければ!」と言う使命感を抱いて,ことあるごとに啓蒙活動に励もうとする“信者”が少なくありません.

その博愛の気持ちは尊いといえば尊いのですが,勧められる側がさほど実名に興味がない場合は,どう対処していいのか困ります.今日も全国各地で,実名信者の熱い勧誘を受けて,勧められる側が苦笑を浮かべているという構図が繰り広げられていることでしょう.

実名に興味がない側のあなたが,そういう災難にあったときはどう対処すればいいのか.信者の勧誘に対する平和で適当なかわし方を考えてみましょう.

「実名論者様」を否定するのは危険

程度の差こそあれ,実名を熱く勧めたがる信者の皆さんは,「実名によってもたらせる新たな可能性」を信じ,その可能性を人より早く気づいていることに,ちょっぴり優越感を抱いていると言えるでしょう.どうも熱が入りすぎている人の中には,実名に過大な望みを託して,いまいち不本意な現状から社会を大変革してくれる救世主のように思えるケースもあります.

いや,あくまで極端な例を挙げているだけなので,「俺は違う!」とムキにならないでください.もちろん,私の周囲の実名好きのみなさんに対して,私がそういう目を向けているわけでもありません.

今後の人間関係を考慮した言い訳で話がそれましたが,実名を熱く勧める人にとって,実名にハマっていることが誇りであることは確か.何はさておき,そこを見逃さないようにしましょう.

例えば,最近実名にハマっている同僚に,「お前も実名で活動した方がいいよ」と熱心に勧められたとします.素晴らしさを説かれても,いまいちピンと来ないからといって,

「うーん,よくわかんないなあ.みんなが実名で無難な会話をしているだけなんて,なんか気持ち悪い世界のようにも思えるけど」
「実名でも池田信夫さんみたいな人は言いたい放題だし,それが本当に実名かどうかを確かめるのも困難なんでしょ.なんかめんどくさいよね」

などと,偉大なる実名様のメリットを否定する言い方をしてしまうのは危険すぎます.

ムキになってさらに熱く語ってくるぐらいならまだしも,「ハァ〜」と深いため息をつきながら,救いがたい愚か者を見るような目を向けてくるかもしれません.

まあ,わかり合えなくてもべつにいいといえばいいんですけど,お互い,相手に悪い感情を抱くきっかけになるのは避けたいところです.向こうだって,今の時期たまたま実名にハマっているだけで,けっして悪気があるわけじゃないし,人間として何かを失ってしまったとまでは言い切れません.

一生懸命に実名の魅力を語ってくれたら,たとえピンと来なくても,

「なるほど,そういうふうに実名を担保に発言に信頼と責任を持たせるっていうのも,ユニークな考え方だね」

と,その教義に衝撃を受けたかのような反応をしておくのが,大人の包容力でありそれなりに満足させるマナーです.

そういうふうに言えば喜ぶのはわかっていても,まるでその相手までホメるみたいで抵抗がある場合は,質問に逃げましょう.

「ハンドル(ネーム)とはどう違うの?」

と,同じようなものの名前を持ち出してきて,実名の優位性を語らせるもよし,

「なんか実際に会うたびに,いちいち名刺渡さなきゃいけないんでしょ?」

そんな歪んだ先入観丸出しの誤解をわざとぶつけて,ひとしきり説明させるもよし.

いずれにせよ,どうでもいいと思っている気持ちを覆い隠したまま,相手にそれなりの満足を覚えてもらうことができます.

ハマりっぷりを批判するのはもっと危険

まったく実名で活動したことがないわけではなく,ちょっと前にやってみたけど,ハマれなくてやめてしまったケースも,けっこう多そうです.

そういう状態にあるあなたに,ハマっている同僚が例によって熱い口調で,

「まずは,ブログでもツイッターでも全て実名で活動すると,面白さがわかるよ」
「何でもいいからどんどん実名でアウトプットしていくと,そのうちあなたの実名にも箔がついてきて楽しくなるよ.って勝間和代さんが言ってたよ」

と実名教,じゃなかった,実名論者における定番の説得フレーズを説いてきたとします.「ほお,そういうもんなんだ.今度やってみるよ」と適当に納得しておくのはいいとして,つい勢いで,

「その割に,お前の実名は山田太郎と同じくらいしか価値ないよなw」

などと冷やかしてしまわないように気をつけましょう.ハマっている人は,誇らしさの裏側に,多くは無自覚にですけど,

「自信がなくて実名にすがっているように見えるんじゃないか」
「根の深い承認欲求を実名で紛らわそうとしているように見えるんじゃないか」

といった不安を抱えています.何気ない冷やかしが引き金になって,心の奥の地雷を踏んでしまいかねません.

そこまでややこしい話じゃなくても,はまりっぷりを感心するセリフの裏側に,

「よっぽどヒマなんだな」
「その分,もっとマシなアウトプットを出せよ」

という本音の気配を勝手に察知してしまいがち.

なんせ日頃から他人の心に土足で踏み込んでいるだけに,相手の心の動きに対してもきっと敏感です.仮にカケラも思っていなかったとしても(カケラも思っていないケースは稀ですが),相手はそう受け取るでしょう.

ハマりっぷりに対しては,適当に,

「凄いなぁ.オレもちょっと実名で活動したくなってきた」

とうらやましがっておくのが無難であり,相手に対する大人のやさしさ.単なるおためごかしではなく,そのセリフを聞いたときの相手の満足そうな表情を見ることで,大人としての深い喜びも味わえるでしょう.

実名をきっかけに相手と仲良くなる方法

仮に,実名の話題をきっかけに相手との距離を縮めたいなら,その場の口先だけでなく,次に顔を合わせたときに,

「あれから,オフ会では名刺を配るようにしたよ.山田ハム太郎で」

と具体的な実績を話せばバッチリです.

熱く勧めてきた相手が,上司だったり仲良くなりたい異性だったりした場合は,とりあえず勧められたとおりに活動してみて,実名の魔力に魅せられたフリをしましょう.

「ちょっと慣れると本当に実名の方がいいですねー.携帯のアドレス欄も山田太郎さんだらけになりましたよ」

とまでリップサービスしておけば,さらに完璧.相手は信者ですので,絶賛なら少々の違和感は気にしないでしょうし,オチとして「でも私の知り合いは電脳地方の人達ばかりなんですよね」とでも言っておけば,実名の責任ではなくなるので角が立たなくて済みます.

具体的な対処法を書いてきましたが,こっちは所詮一個人.実名が彼らの理想通りに普及しないのは実名が悪いのではなく,わかってない異教徒や足を引っ張る奴らの問題だということにして批判の矛先を変えておきましょう.

この記事は,「ツイッター信者」にその素晴らしさを熱く語られたときの平和で適当なかわし方 (石原壮一郎)とその記事についたはてブコメントの「汎用性たけえ」と言う反響を見ながら,ネットでの知り合いと初めて会うときの「使えるフレーズ&マナー」 (石原壮一郎)と言う記事(の実名云々の部分)へのブーメラン記事を書いてみたくなっただけなので,真には受けないように.そんなことを踏まえつつ,それぞれのニーズや好みに応じてまた主語を変えてお楽しみいただければよろしいかと思います.

今回のマナー

「実名信者」が抱える誇らしさと不安 ―― その両方を見逃すべからず

蛇足

ちなみに,ジェネレータで生成してみた結果.
「実名信者」にその素晴らしさを熱く語られたときの平和で適当なかわし方
途中がうまく繋がってないですねぇ.テンプレート文面は,もうちょっとよく考えて調整した方が良かった.