「先読み能力」辺りで思うこと

最近,似たような結論に達している記事を連続して読んだので,これらを読んで思ったことをメモ.まだ整理できてないですが.

こんなにも優秀なんだから、着実に経験を積めばすぐにでも全員が即戦力になるんじゃないかって気がするんだけどこれが恐ろしいほどに明暗が分かれる。所謂仕事がデキる奴とデキない奴。適当にやっておいて、と仕事を丸投したら、良い具合に仕上げることが出来る奴と本当にテキトーにしか出来ない奴。何でこんなに違うんだよ、と、話が違う。

「あいつは頭は良いけどバカなんだよな」と言われる若手社員

似たような事は,自分も感じたことがあるし,周りでもよく聞きます.

他人の癖や性格を観察する能力

「先読み能力」と言ってもただ単に「先読みしてみました」だけではマズく,先読みするからには自分の読みを的中させる必要があります.見当はずれな「先読み」ばかりをしていると周りからは「暴走している」ように映り,何もしないよりもさらに評価を下げると言う事態を招きます.多くの人が「デキる奴」のような先読みをしないのは,そういったリスクを犯してまで得られるメリットを実感できないからのような気もします.

さて.「先読み」するにしても手元に情報が皆無の状態で先読みを的中させる事は困難です.そのため,まずは情報収集を行う必要があります.

それは格好の「先読み」の訓練の時間だと思った方がいい。そのとき、以下のことに心がけて話を聞くといい。

  • この人はどんな立場で喋っているか?
  • この人のメリットなにか?
  • この人のデメリットはなにか?
  • この人の目的はなにか?
  • この会議における、この人の背景となる組織の目的はなにか?
  • こちらのメリットはなにか?
  • こちらのデメリットはなにか?
  • こちらの目的はなにか?

上記のことは忘れがちになるので、新人の間はどこかにメモしておいて、会議中、こっそり見ながら話を聞くといい。
すると、会議はなんのために行われているのか、会話はどのように運んでいくのか、自然に分ってくるのだ。そうでなければ自分が当事者でない会議など、退屈で眠くなってしまう。

「仕事がデキる人」と「仕事をする人」の違いと習慣 - shi3zの長文日記

いろいろと項目が挙がっていますが,もう少し大雑把に言うと「喋ってる人の癖や性格を観察する」事かなと思っています.

自分の言いたい(言わなければならない)事を過不足なく適切に表現できる人と言うのはなかなか存在しません.ある部分は必要な情報が欠けていたり,別の部分では思い違いが入っていたりと,多くの情報は不完全な形で伝わっていきます.「先読み能力」とは,この欠けたり間違ったりしている部分を推測する能力であると考える事ができますが,この情報を推測する際には喋った当人の性格や癖,さらには,その人のバックグラウンド(専門分野や関わったプロジェクト)の情報が役立ちます.

そう言えば,海皇紀 と言う漫画の中で,海上に浮かんでる船をチェックポイントとして,それを自船で先に回りきった方が勝ちみたいな競争をする場面があるのですが(大体の位置は地図で分かっている),主人公がチェックポイントとなる船を操作している船長の性格から船の位置をピタリと当てると言う描画がありました.そう言った話に近いのかもしれません.

この類の先読み能力は,何と言うか「その人に特化される」と言う性質が少なからず存在します.

「清水さんならそうおっしゃると思って、次のページを用意してあります。こちらを見てください」

「仕事がデキる人」と「仕事をする人」の違いと習慣 - shi3zの長文日記

デキる人の一例として紹介されていた文ですが,この一言を言えるようになるためには,言うべき相手とそれなりに長い付き合いが必要とされます.非常にたくさんの人と対応する機会のあるような人の場合は,初対面での印象からそれまでの経験で似た人を探す事によってある程度パターン化して目測を付けるような事も可能かもしれませんが,どちらにしてもかなりの人と実際に付き合う必要があります.その意味で,「先読み能力」は新人のようにその業界に入って間もない人,もしくは特定の数人としか交流する機会がないような人に求めるには辛い能力のような気もします.

話が少しずれますが,「喫煙室によく行く人や飲み会によく顔を出す人の方が仕事ができる」みたいな話をたまに耳にしますが,そういった他人の癖や性格を知る機会が多くなるのが一因なのかもしれません(別に擁護してる訳ではありませんが).

相手を信用しない性格

別の観点として,相手を信用しない性格と言うのが効いてくるのかなと言う気がしました.これは経験則なのではっきりとした事は言えませんが,「渡ってきた指示には必ず正しい事が書いてあるはずだ」のような信念で動く人と「書いてあることは基本間違っている」みたいな感じで動く人がいて,多くの場合は後者の方がうまくいきます.

この辺の話は,「確認や報告をきちんとする事」のような話に落ちるような気もするのですが,経験的に前者が後者に比べてそういった事(所謂,ほうれんそう)を怠っていると感じることはありません(むしろ,後者の方がそういう作業は怠る事が多い).この辺はうまく言えませんが,嘘を嘘と見抜く能力と言うような感じなのでしょうか.

もっとも,「言われた事は全て正しいと言う事にしておく」と言う原則で動いた方が自分にとって有利な場合も多いので,この辺の駆け引きまで含めると難しくなります.

「先読み能力」を要求する事

最後に.こう言った話をする時は,いつも立場が気になります.何度か書きましたが,「先読み能力」は多くの場合は「相手の言外の間違い(や不足)を見抜く能力」である事が多く,これを要求する事は自分の落ち度を相手に転嫁する形になり,しばしば論争を引き起こします.実際,問題となるのは情報を正確に伝えきれてない場合が多く,「先読み能力」をどう育てるかみたいな議論をしている位なら「どうやって情報を正確に伝える体制を整えるか」と言う議論をしていた方が良いとも考えられます.

「言われた事以外は何もしないが言われた事は完璧にやる」と言う人材は大切な人材だと思うのになぜ世の中ではあまり需要がないのだろうと考えた事がありますが,この理由の一つにそう言った人を使いこなせるほど適切に指示を出せる人材が少ないと言う問題があるのかもしれません.