クラウド時代の禁止語のすすめ

ここ数日、「クラウドの定義」に関連する話題が盛り上がっていました。

「クラウド」と言う単語に関しては、当初から指し示す範囲が広すぎるため、何を言っているのかが分かりづらくなる等の問題が指摘されていました。

クラウドコンピューティングに類似する概念や用語はかねてより多く、単なる用語の言い換えやバズワードという指摘も多い。2008年4月にサン・マイクロシステムズのCEO、ジョナサン・シュワルツは「クラウドとは、ネットワーク・コンピューティングを新しい言葉で言い換えたものだ」と発言している。2008年9月にオラクルのCEO、ラリー・エリソンは「既に我々が行っている事で、宣伝文句が変わっただけ」と批判している。

クラウドコンピューティング - Wikipedia

そして「馬鹿」と言う意味だけが残った - Life like a clown と言う記事で、「全ての蔑称は最終的に『馬鹿』と言う意味しか残らない」と言う感想を抱いた事を書きましたが、蔑称に限らず、抽象的な概念を含む言葉は最終的に「すごい」、「新しい」、「ひどい」、「馬鹿」のような非常に大雑把な意味しか残らないな、と感じる事がよくあります。以前に Web 2.0 に関する記事で、「そもそも、WEB2.0とは『あたらしい何か楽しいもの』に他ならない」と言う主張を見た時にはある種の衝撃を受けたのですが、実際問題として、「クラウド」と言う単語ももはや「インターネットを介した新しいサービス」程度の意味しか持たなくなりつつあります。

禁止語のすすめ

yoko-hirom IaaS は IaaS と呼んではどうか。そうしないのは何故か。あらゆる才能を「頭がよい」と呼称しておいて,「「頭がよい」とはどういうことか?」と論じているような違和感。「クラウド」は,包括的概念に用いてはどうか。

[B! naoya] 先の記事への反応に関して - naoyaのはてなダイアリー

知的複眼思考法 誰でも持っている創造力のスイッチ において、「何らかの議論を行っている場において曖昧で多義的なキーワードに遭遇した場合、そのキーワードを「禁止語」に設定し別の言葉で言い換える」と言う禁止語のすすめが提唱されています。

こういう場合、私は「禁止語のすすめ」を提唱している。あいまいで多義的なキーワードに出合ったら、その言葉を使わず別の表現に言い換えてみるのである。「個性」や「ゆとり」に出合うたびに、それをどのような言葉で置き換えたらいいかを考える。そうしたちょっとした努力だけでも、「なんとなくわかったつもり」にさせる言葉の魔力から逃れられる。自分がその言葉を使う時にも、別の言葉で言い換えてみる。こうやって、多義的であいまいな教育用語を、次々と言い換えていくと、普段私たちが教育を語る際に、どれだけ「わかったつもり」の議論をしているかが明白になる。

Child Research Net Library 教育Today

「クラウド」と言う単語は、この「禁止語のすすめ」が最も効果的である単語の一つだろうと思います。「クラウド」と言う言葉の定義自体の議論にしろ、「クラウドと呼ばれているものたち」の中身の分類等の議論にしろ、取りあえず「クラウド」と言う単語を使用する事を止め、各々が「クラウド」と言う単語で表現したかった事を別の言葉で言い換える事から始めると、相互理解しやすくなるだろうと感じます。