想定読者層と話題の関係

久々に適当な話。

ちょっと前に 「喫煙席なのに追い出された」愛煙家の悲鳴 | 日刊SPA! と言う記事が話題になっていました。はてブのコメント でも書きましたが、私がこの類の話題(賛否両論を呼びそうな話題)を見るときは「この媒体(メディア)は、どの辺りを想定読者層として捉えているのだろう?」と言う事をよく考えます。

ええ、いまは35、6歳がコアな読者層です。昔は27、8歳でしたからかなり上がってきてますね。でも週刊誌としては最も若い読者層ですよ(笑)。いわゆる活版って、昔は読者の主流が40代でしたが、いまは60代。これも時代ですね。仕方ないと思います。

20代の人たちは、紙の雑誌よりもネットのほうに行っちゃってますね。

SPA!の編集長インタビュー | Fujisan.co.jpの雑誌・定期購読

雑誌自体の読者層とは少し異なるかもしれませんが、恐らくメディア側が想定している読者層としては上記にもあるように 35, 6 歳(の男性)、もうちょっと言うと「人生は、酒とタバコと女とギャンブル」のような「一昔前の(昭和の)ステレオタイプ的な読者」を想定しているのだろうと思います。

最近引っかかった別の例としては、アベノミクスで就活生が高望み? | HR | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準 と言う記事があります。「新卒の採用」と言う話題が取り上げられる場合*1、その時の情勢が売り手市場であっても買い手市場であっても「企業(人事担当)はいろいろ苦労している。学生は甘えている」的な論調になりがちです。

新卒採用に関しては、そもそもの制度自体、および採用する側される側それぞれに問題があると考えられますが、採用される側(新卒学生)の問題がクローズアップされやすいのは、メディア側が想定している読者層を考慮した影響も多分に含まれるのだろうと思います。

読者を選べなくなった Web 時代

Web 上での炎上案件を見ていると、「元々雑誌媒体だったメディアが、特定層への差別感を丸出しにした記事を公開した」ために起きたと思われる案件がぽつぽつ見られます。これまでは、記事を読むためには「お金を払って雑誌を購入する」と言うステップが存在していたために読者層が絞られていた(炎上せずにすんでいた)雑誌も、Web 上に無料で記事を公開し始めたために想定外の読者層が増加し、それによって想定外の読者層とのトラブルが顕在化し始めた結果ではないかと感じます。

「読者を選べない」と言う問題は、書き手としては、昔からどのように付き合っていくか頭を悩ませているものの一つだろうと思いますが、「お金を払って購入する」と言う行為がなくなる事によって、より一層、読者層のコントロールが難しくなってきています。

昨今は人気ブロガーと呼ばれる人達が「メルマガ」と言う形態で記事を限定公開していく事例も多くなってきましたが、メルマガに期待されている効果の一つに「読者層を絞る」事もあるようです。

Web メディアと読者の衝突が顕在化する時

個人的に、今、一番気になっているのが「Web メディア(と言うか、2ch まとめブログ)と読者の衝突が顕在化するのはいつか?」と言うものです。一部の「ゲーム批評ブログ」と呼ばれる(元)2ch まとめブログに関しては現在でも読者との衝突が顕在化する事例がしばしば見られますが、それ以外のものに関しては、先に上げた雑誌媒体だったメディアほどの衝突は(頻度的には)まだまだ少ないと言う印象です。

それならば 2ch まとめブログ等は雑誌媒体だったメディアに比べてマシなのかと問われるとそう言う訳でもなく、例えば 痛いニュース(ノ∀`) は、下記のように、明らかに特定の層を意識した記事作りをしていると言う印象があります。

「おバカなニュース」カテゴリなどは特に考え無しに笑えるのだが、政治記事・特定アジア記事・女性問題の記事になると、基本的に「右翼・嫌韓嫌中・男尊女卑」を主路線としたレスの抽出傾向になる。

これについては他のコピペブログと同じく、「取り上げるレスが恣意的すぎる」 「2ch元スレの原型をとどめていない」 「印象操作のやり口がマスゴミと大差ない」と批判されるため、そこいらを流せる大人対応の人・軽く笑い飛ばせる人以外の閲覧はお勧めしない。分別の付いていないお子様に見せるのはもっとお勧めしない。

痛いニュース(ノ∀`)とは (イタイニュースとは) [単語記事] - ニコニコ大百科

例えば、google:痴漢 site:blog.livedoor.jp/dqnplus/ と言うキーワードでググると「冤罪」または「女性側に問題がある」事件ばかりがヒットします。冤罪ではない痴漢事件も同程度かそれ以上に存在するであろうにも関わらず、取り上げられる話題にこれだけの差が出てくるのは、痛いニュース(ノ∀`) の想定読者が主に男性、もう少し言うと「自分は痴漢なんてするはずないと思っており、逆に、冤罪で嵌められたらどうしようと戦々恐々している男性の電車通勤層(サラリーマン等々)」を読者層として想定しているためと考えられます。

こんな感じで、2ch まとめブログ等も雑誌媒体だったメディアと同様、特定の層を想定してそれ以外の層を蔑む(ネタにする)ような記事を乱発しているにも関わらず、雑誌媒体だったメディアほど読者との衝突が顕在化しないのは、これらの媒体が想定している以外の層がWeb 上にはまだまだ少ないためであろうと思います。

しかし、ここ数年、Twitter の一般化や Facebook の流行などによって、これまでになく多様な層が Web 上で活動をするようになってきました。特に、先に挙げた痛いニュース(ノ∀`) などは、Facebook で「いいね!」される数も昨夏辺りから急速に伸びているようで(参考:転載禁止された元 2ch まとめブログに関するレポート - Life like a clown)、今後、想定外の読者との衝突がどんどん顕在化してくる事が考えられます。

そう言った変化もあり、Web を主戦場としてきたメディアと読者との衝突がいつ起こるのか、また、メディア側はそう言った変化にうまく適用できるのか、と言う辺りを個人的に楽しみにしています。

*1:特に取り上げた媒体が上記のようななんちゃら経済と言う名前の媒体の場合